進学塾ism

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講師ブログ

こんにちは,高校数学担当の森蔭です。

 このブログも今回が2022年度の最終回となりました。今年度のISM生の国公立大学受験は、3月22日に三重大学、名古屋市立大学、滋賀県立大学の後期日程の発表をもって終了します。しかし、その後も私立大学の後期日程、専門学校入試、各大学の補欠合格者の発表が続々と行われます。ISM生の入試はまだ終わりを迎えていません。

 このようにここ数年来、大学入試をはじめとする入学試験は長期化し多様化しています。それに加えて大学入試改革やコロナ禍による様々な予定変更があり、今年の受験生は本当に長く厳しい戦いを強いられてきました。彼らは口にこそ出しませんが、大きな不安とやり場のない不満を抱えながらこの苦境を乗り越えようとしてきました。そんな中でも夢を見失わずそこへと向かおうとする姿勢、一心不乱に自らの物語を綴る彼らの姿に私は尊敬の念が堪えません。


 先日、ISMの卒業生が久しぶりに高校部を訪問してくれました。彼はISMを卒業後、大学の情報学部に進学しました。その後大学院を経て、この春から総合電機メーカーへの就職が決まったため、その報告のために来校してくれました。ISMに在籍していた高校生の時から彼の夢はコンピューターゲームの開発や制作に携わることでした。大学院卒業後もゲーム関連企業への就職を志望していましたが、それを叶えることはできませんでした。ところがそれでも彼は夢を諦めませんでした。企業の就職が叶わぬなら個人でゲームソフトを制作すれば良いと考え、コツコツと制作をつづけてきました。その甲斐あって彼が制作したゲームソフトが企業の目にとまり、このたび大手ゲーム会社から販売されることになったのです。この事を彼は謙虚にも「幸運」と話していましたが、一度は潰えたかと思われた夢に向かって再び立ち上がるには相当の覚悟と努力が必要であったに違いありません。彼はこれからも様々な形でゲームソフトの開発や制作に関わることのできる道を探しつづけていきたいと語ってくれました。

 この春ISMを巣立つ高校生の他に、もう一人ISMから旅立つ人がいます。彼もISMの卒業生で、卒業後に合格した大学の入学を辞退して夢に向けて勉強をつづけながら、アシスタント・アドバイザーとして私たちと一緒に高校生を支えてきてくれました。この春ISMを卒業する高校生からの信頼は絶大で、彼の力をなくして今年の受験はあり得なかったと思われるほどです。私は彼の姿を見つづけてきて、夢を実現するための覚悟や努力を目の当たりしてきました。しかしそれ以上に、彼という存在は私にとって自分が忘れかけていたものを再び思い出させてもらえるような存在でした。

「夢」には形などありません。ただ、人はそれを何か形のあるものに置き換えようとしてしまうのです。しかし彼はいつも形ではなく自分が本当に向かうべきものが何なのかを探しつづけてきました。「夢」の本質を追い求めてきたのです。それこそが本当の意味での「夢発見、夢実現」であることを伝えるかのように。


思えばこれこそが世代を超えてISMの卒業生が受け継いできた文化なのだと思います。

人は去っても文化はそこに残り続けるのです。彼らは私にそのことを改めて気づかせてくれました。


先日、日本のテクノポップの草分けであるY.M.O.の高橋幸宏さんが亡くなられました。その際に同メンバーの細野晴臣さんが語った言葉をISMから飛び立つ皆さんに贈ります。

『人の一生は一冊の本のようだ。

 いま「高橋幸宏」という本を読み終え、多くのファンがあとがきを書こうとしている。

 物語は終わったが本は消えず、ずっとそこにある。』

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