講師ブログ
2017年6月12日
梅雨の晴れ間
こんにちは,高校数学担当の森蔭です。
先週梅雨入りが発表されましたが,梅雨とは思えないほどのカラッとした天気が続いています。高校3年生の多くは5月でクラブを引退し,本格的な受験勉強をスタートしました。ISMでもこれまでには見たことのない眼差しで勉強に打ち込む高校3年生の姿を見ることができます。ただ,こんなにいい天気だとクラブをしたくて体がうずきますよね。気持ちはわかります。焦らずゆっくりでいいですよ。
ここのところスポーツ界でも「引退」が取り沙汰されています。フィギュアスケートの浅田真央さん,ゴルフの宮里藍さん,そして先日,陸上の100m世界記録保持者のウサイン・ボルト氏が,今年の8月の世界選手権をもって陸上界を引退することを表明しました。ボルト氏といえば,数年前にテレビのニュース番組で当時高校生だった桐生祥秀さんと対談したことを記憶している方もいるかもしれません。桐生さんはその時の言葉の力に支えられて,今も日本人初の9秒台を目指して陸上競技を続けているそうです。その時ボルト氏が語った言葉とは次のようなものです。
「多くの選手は,トップスピードからさらに速くなろうとする。
それでは速度がテクニックに追いつかず逆に遅くなってしまう。
トップスピードに乗ったらそれ以上は速くならない。
だからといってその記録を超えようと焦ってはいけない。
速く走ることばかりを考えて逆に遅くなる選手はたくさんいる。
速く走ろうなんて考えるな。自分の走りをすることだけを考えればいい。」
この言葉のとらえ方は人それぞれだと思います。しかしひとつだけ言えることは,誰にでも自分を見つめる時間が必要だということです。受験勉強も同じです。志望大学に合格したい,そのために成績を上げたい,でもクラブがしたくてウズウズする自分もいる。そんな時,焦ってはいけません。まずはそんな自分を全部受け止めて見つめ直してください。そして自分なりの走りを見つけましょう。決して全速力が正しいとは限らないのですから。
この対談でボルト氏は次のようにつづけます。
「最後にひとつ,いいかい。日本の陸上界に言いたい。
桐生にあまりプレッシャーをかけないでほしい。
いいか,桐生。自分のために走れ。それが国のためになればいい。
まずは自分のために走る。そして『楽しむ』
それが日本のためになるんだ。決して国のためだけに走ってはだめだ。」
この言葉は私をはじめとする指導者や保護者への戒めに聞こえます。走ること,学ぶこと,プレーヤーがそれを『楽しむ』ことができるのは,指導者や保護者が教えること,見守ることを『楽しむ』ことができているときです。そういう意味で,私も自分を見つめ直す必要があります。指導者,保護者のプロとしてもっと楽しまなくては,そのためにもっと準備しなくては。
そして,ボルト氏は今後,ドイツサッカー1部リーグのドルトムントの練習に参加しプロサッカー選手としての道を模索するそうです。本当に人生を楽しんでいます。
季節は梅雨でも今日のように晴れる日もあります。モヤモヤした気持ちにも一瞬の晴れ間が覗くときもあります。私も同じですよ。だから焦らずゆっくり,楽しみましょう。まだまだこれからです。