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What’s new? 斧です。

「あーあ、やる気出ないな……」

テスト前なのに、受験が近づいているのに、ベッドから出られない。ベッドがまるで最強の磁石になったみたいで、体を起こすのが人類最大の難関。机の前に座っても、参考書より先にスマホに手が伸びる。通知が来てないか確かめる作業、あれ、何時間でもやれちゃいますよね。

誰もが経験するこの感覚。本当にキツイですよね。

もしあなたが「私は意志が弱いからダメなんだ」と思っているなら、それは大きな誤解です!「やる気」は、あなたの精神論の問題ではありません。実は、脳の仕組みによってコントロールできる、科学的な現象なのです。

今回のコラムでは、「やる気」を待つのではなく、自分で作り出すための具体的な方法を、脳科学と行動心理学に基づいて紹介します。この方法を知れば、あなたはもう「やる気待ち」の受身な自分を卒業できます!

やる気スイッチの正体は「動く」こと

🤯「作業興奮」が脳のエンジンをかける

「やる気があるから、机に向かう」これは、多くの人が信じている「やる気の順番」です。でも、脳科学の事実はこれと逆です。

私たちの脳には「側坐核(そくざかく)」というやる気の源泉があります。この側坐核は、残念ながら「さあ、勉強を始めるぞ!」という思考だけではなかなか動きません

むしろ、側坐核にとって「勉強を始めるぞ!」という決意は、「面倒くさい」という赤信号です。

側坐核が動き出すのは、体を動かし始めたときです。つまり、「動くから、やる気が出る」のです。これを「作業興奮」と呼びます。

この仕組みについて、脳科学者の池谷裕二氏は、著書の中で以下のように説明しています。

「やる気を生み出す脳の部位に『側坐核(そくざかく)』というものがあります。(中略)やる気がない場合でも一度やり始めると、その刺激で側坐核が自己興奮して集中力が高まって気分が乗ってくるのです。」

(池谷裕二・糸井重里著『海馬 脳は疲れない』より)

🚀実践テクニック:とりあえず「ベビー・ステップ」を踏む

この作業興奮を意図的に起こすための秘訣が、「とりあえず5分だけやる」というベビー・ステップ(最小の一歩)です。

目標を極限まで小さくする:「数学のワークを10ページ進める」ではなく、「ワークを開いて、1行目だけ読む」「英単語を5個だけ覚える」といった、誰でも達成できるレベルに設定します。

物理的な行動を始める: 重要なのは、「考えること」ではなく「行動すること」です。「とりあえず、ペンを握って、その辺に線を一本引くだけでもいい」。

5分経てば、脳は興奮状態に入っています。「あと1問だけ」「ここまでやっちゃおう」と、自然と手が動き出すのが作業興奮の力です。もし5分経ってもやる気が出なかったら…? その時は潔くやめてもいいのです。でも、きっとやめられなくなっていますよ!

やる気を逃さない「仕組み」づくり

せっかくエンジンがかかっても、邪魔が入ったらすぐに止まってしまいます。あなたのやる気をキープするための「環境」と「目標」の設計術を学びましょう。

🚪環境を整える:「選択アーキテクチャ」

やる気を失う最大の敵は「誘惑」です。意志の力でスマホを我慢するのは、非常に疲れる作業です。意志の力なんて、筋トレでいうなら最初の10で使い切っちゃいます。

大切なのは、意志の力を使わなくても済む仕組みを作ることです。

誘惑を遠ざける: 勉強中は、スマートフォンや漫画、ゲーム機などを物理的に別の部屋に置く。究極は、「スマホを家族に預けて、ロックナンバーも一時的に変えてもらう」など、取り返すのが面倒なレベルにしてしまいましょう。あなたとスマホの間に、物理的な壁を作って戦ってください

きっかけをシンプルに: 机の上には、「次にやるべき参考書とノート」以外は置かない。机に着けば自動的に勉強が始まる状態を作る。

🧩目標を細分化する:短期的な達成感を作る

「志望校合格」という大きな目標は、達成までに時間がかかりすぎるため、脳は途中で飽きてしまいます。まるで果てしなく遠い砂漠のようです。

大きな目標を、「今週やること」「今日やること」「この1時間でやること」と細かくタスクに分解しましょう。小さなタスクを次々と達成するたびに、脳はドーパミン(快感物質)を受け取り、これがモチベーションを維持するガソリンとなります。小さなタスクは、砂漠の中の「オアシス」です。

なぜ勉強するのか?未来の自由を手に入れるために

これらのテクニックを実践するために、「そもそも、なぜ勉強するのか?」という、最も重要な問いへの答えを明確にしましょう。

勉強は、「誰かに言われたからやるもの」ではありません。 それは、「なりたい未来の自分」を自分でつくり上げるための、最も確実な投資です。

🎓選択肢を増やす「自由へのチケット」

勉強を頑張る最大の理由は、「将来、あなたの選択肢を増やす」ためです。心理学者のエドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏が提唱した自己決定理論(Self-determination theory; SDT)は、人が自発的に動機づけられる(やる気を出す)には、「自分で決めている感覚(自律性)」が重要だと説いています。

●行きたい場所を選ぶ自由: 勉強によって選べる大学、就ける職業の幅が広がります。それは、「自分が好きなことを仕事に選べる自由」であり、「将来、やりたくないことをやらなくて済む自由」につながります。勉強は、未来の自分を縛るものではなく、未来の自分を解き放つチケットなのです。

🧠世界を深く理解する「一生モノのスキル」

数学や物理は、単なる公式の暗記ではありません。

●数学: 物事を筋道立てて、論理的に考える力(ロジカルシンキング)を養います。

●現代文: 複雑な文章の中から、筆者の意図や情報の本質を正確に読み解く力を養います。

これらの「考える力」や「理解する力」は、大学に入ってからも、社会人になってからも、あなたが世の中を深く理解し、困難を解決していくための一生モノの武器となります。

圧倒的な自信の源泉

最も重要なこと。それは、努力して結果を出した経験が、揺るぎない自信となることです。自分で目標を設定し、困難を乗り越えて達成したという事実は、「自分はできる」という自己肯定感の確固たる根拠になります。この自信こそが、学業だけでなく、人間関係や人生の困難に立ち向かうときの、最強のメンタルとなり、あなたを支え続けます。

今日、最初の一歩を踏み出そう

あなたの「やる気」は、誰かが与えてくれるものではありません。あなたの脳の中に、そしてあなたの行動の中に、すでに備わっています。

「今日は未来の自分のために、5分だけ机に向かう」

たったこれだけです。その小さな一歩が、作業興奮を起こし、あなたの未来を自分で決定する大きな力に変わります。

最後に、電球を発明したトーマス・エジソンの有名な言葉を贈ります。彼は、数えきれない失敗を乗り越えて偉業を成し遂げました。

「私たちの最大の弱点は、諦めてしまうことにある。成功するための最も確実な方法は、常にもう一度だけ試してみることだ。」トーマス・A・エジソン

諦めずに「もう一度だけ」ペンを握り、「もう5分だけ」机に向かう。それが、あなたの未来の選択肢を広げる、最大の勇気になります。

さあ、スマホを遠ざけて、まずは一問だけ、始めてみましょう!

終わり?

ありがとう、Gemini。

コラムを書くときに、よく思う。何をどのように書こうか、どういうメッセージ性を込めようかって。

個人の経験についてのみ言及しているならば、それは主観的で、時に押し付けがましく、再現性は疑わしい。

科学的な研究やデータに言及しているならば、客観的であり、再現性もあるといえるが味気ない。

ある程度の説得力を持たせるためには、客観的に正しいと思わせるような科学的知見を含める必要があるが、かと言って、生成AIに書いてもらった内容だけだと、月並みな言い方だが、血が通っていない、という気もする。

知識をただ得て使うだけなら、生成AIに任せれば全て良いことになってしまう。人間が人間として大事なのはむしろ知識を得ること自体ではなく、知識を得る過程で感じたこと、経験したこと、をどう消化・昇華し、未来に活かしていくか、なのではないだろうか?

努力できた自分最高!
昨日より長い時間集中できた!
こうやって失敗したから次はやり方を変えてやってみよう!
集中してなくて先生に叱られた、気をつけよう。
友達に点数負けた、くやしい!次こそは超える!
英語が得意だから、もっと伸ばそう!
数学が苦手だから、少しでも工夫して勉強しよう!
先生に褒められるように、もっと頑張ろ!
友達に化学を教えてもらったから、代わりに地理を教えてあげよう!

勉強に限らないけれど、行動(行動経済学でいうところのシステム1、システム2ともに)は感情、思考に関わっていて、良くも悪くも生成AIにはそれがない。

切る力に優れているはさみに対して、人間が切る力で超える必要はありません。

走る力に長けている車に対して、人間が走る力で勝つ必要はありません。
知識を蓄積し、容易に作文、要約、プログラミング、計算、画像処理・生成をする生成AIに対して、人間がそれらのステージで敵う必要はありません。これらはあくまでも、人間の生活を良くするための道具です。用途を前提として生み出されたものです。

以前、サルトルの『実存は本質に先立つ』という言葉を紹介しましたが、何を思い、何を感じ、どのように自分を捉え、前に進もうとしているのか、その姿勢こそがAIにはない人間の本質なのかもしれません。

受験生の皆さん、いよいよ佳境ですね。
物語でいえば、最大に面白くなる場面です。
いま本当に苦しい時期だと思います。プレッシャーに押しつぶされそうになっている人もたくさんいると思います。それでも、なるべく下を向かず、前を向こう。

もちろん輝かしい結果を心から願っていますが、どのような結末になろうとも、その解釈は皆さん自身に委ねられています。今重ねている努力は決して無駄にはなりません。

大学受験は日本において試金石です。人生において、とても重要なものだと思います。だからこそ、僕は受験業界で働いています。とはいえ、たかが受験です。受験で人生の全てが決まるわけではありません。人間の価値もそんなものでは左右されません。

人生と同じです。
最後は重要ですが、過程の方がより大切です。
あともうちょっと。頑張って。

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