進学塾ism

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講師ブログ

 こんにちは,高校数学担当の森蔭です。
 新学年がスタートして2ヶ月ほどが経とうとしています。多くの高校では中間テストが行われました。高校1年生にとっては,高校入学後はじめての定期テストで,その結果はとても気にかかるものだと思います。
 テストの結果というと,なぜかいつも「平均点」と呼ばれるものが出されます。私は自分が高校生であった頃から,この「平均点」というものに意味を見出せずにいます。5教科すべてが60点なら平均点は60点です。ただ,5教科のうち3教科が100点で残り2教科が0点でも平均点は60点になります。しかも後者の場合,60点の教科はありません。
 高校2年生以上の諸君はお分かりかと思いますが,「平均点(平均値)」とは,中央値や最頻値とならんでデータの傾向や特徴をひと言で言い表す数値(代表値)のひとつで,読んで字のごとく,いくつかの値を平らに均す(たいらにならす)ものです。ですから,平均値は「真ん中の値」を意味しません。そして何より平均値が代表値として意味をもつのは,てんとう虫を100匹採集したときの体長がおよそ何mmかを考えるときのような,各データに拮抗関係がある場合(統計学的には「はずれ値」がない場合という)なのです。ということで,「教科の平均点」も「数学の学年平均点」も平均値を代表値として持ち出すのに適切な場面かどうかがどうも怪しいのです。
 ただ,私の疑問はこれに尽きません。そもそも平均点を求めるためには,まず各教科の点数を「足し算」することになるのですが,この「足し算」に意味はあるのでしょうか。英語の得点と数学の得点は得点という同種の量を足しているので,一見意味がありそうです。しかし,英語の得点は「外国語の理解」という価値を測るもので,数学の得点は「計算力や論理力」という価値を測るもので,これらの違う価値どうしの「足し算」には意味を感じないのです。
 貨幣システムによって社会が運営されている以上,多種多様の価値を客観的に数値化し,その「足し算」によって交換価値を決めざるを得ないという必要性は理解できます。ただそのシステムを教育の現場に持ち込むときには,利用する側に「客観化によって見えなくなる価値」の説明責任が生じることを覚悟しなければなりません。
 データを分析する基準はたくさんあります。適切な場面に適切な基準が用いられているとは限りません。大切なことは自分の中に基準をつくることです。まだ始まったばかりです。慌てずゆっくり自分の中の基準を探しましょう。

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