進学塾ism

お知らせ/コラム

講師ブログ

 こんにちは,高校数学担当の森蔭です。
 ここ1~2週間ほどに渡り,各高校で中間テストが行われました。高校3年生はGWから続いた,マーク模試,記述模試,中間テストというテストの連鎖が一旦休止します。
 今までは押し寄せてくるスケジュールに追われ,ただただそれを消化するだけの日々が続いていた人も多いのではないでしょうか。この辺でもう一度,志望校の設定・勉強の仕方・時間の使い方など自分自身を分析し直してみてはどうでしょう。
 ここで分析というと,我々はその材料としてテストの点数や順位,模擬試験での偏差値や志望校判定などを用いることになります。このような数値化されたデータは何より客観的(科学的)なもので,最も信憑性のある材料だと信じられています。しかし本当にそうなのでしょうか。
 例えば,模擬試験の志望校判定で最低の評価をされた人が第一志望校に合格する例や,その逆に合格可能性80%以上との判定を受けながら不合格になるような例は,大学入試の世界ではよくみられることです。そしてこのような事例は大学入試だけではなく,スポーツなどの他の社会のさまざまな場面でみうけられます。
 ではなぜ,このようないわゆる逆転現象がおこるのでしょうか。そこには何か秘策や秘訣があるという架空の科学論も,自分を信じて最後まであきらめなければチャンスは必ずやってくるなどという安っぽい精神論も腑に落ちません。正直今の私はこの問いに即答できるものを持ち合わせてはいません。
 ただ,最近読んだ本の中にその答えを導くヒントをみつけました。その本は分子生物学者の村上和雄氏の書かれたものです。氏は高血圧を起こす原因となる酵素ヒト・レニンの遺伝子解読に世界で初めて成功した名立たる科学者で,彼が研究室の学生とともにこの偉業を成し遂げたときのことを次のように記しています。
 「私は,学生たちが世界に勝った喜びを抱き合いながら躍り上がっている姿を見ながら,遺伝子の暗号というのはいったい何なんだろうという思いが胸のうちに湧き上がってきました。遺伝子には人間が生まれてから死ぬまでの間の情報が前もって書き込まれているのです。こんな大量の情報がどこからどうして集まってきて,どのような仕組みでいったい誰が書き込んだのか。それを思うと震えるような感動がわたしの体を貫きました。人間にはまだわからない偉大な何者か(サムシング・グレート)が遺伝子をコントロールしているとしか思えません。」
 ひとりの人間の細胞はすべて同じ遺伝子をもっています。しかし,それぞれの細胞は役割が違うため遺伝子情報のうちの5%ほどしか働いていません。そこで氏は,残りの95%を働かせるためには感動や喜び,笑いといった心の持ちようが重要なファクターとなるという仮説を立て,実験による検証を行ってきました。
 私は氏のこの考えを全面的に受け入れることはできませんが,氏のような科学者が「科学と宗教の接点」を探ろうとしているという姿勢には賛同できます。私は科学もひとつの思想にすぎないと考えています。だからこそ,それのみに傾倒しそれのみしか信用しない姿勢には危険性を感じます。だから神の力を信じよなどとは言いません。ここで大切なことは,ものごとを見るときにはさまざまな視点を用いるべきだということです。
 ひとつの考えに固執せず,もっとたくさんの意見を受け入れてみましょう。そうすることで,あなたにとってのサムシング・グレートが働きかけてくれるかもしれません。

ページトップに戻る