進学塾ism

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講師ブログ

こんにちは、高校数学担当の森蔭です。

2学期が始業して2週間が経ちました。各高校では、実力テスト、文化祭、模擬試験と慌ただしく行事が進み、あっという間の時間だったのではないでしょうか。今週からはそれも一旦は落ち着き、ふと我に返るときがおとずれます。

 

夏休み前から忍び寄ってきたコロナ禍の波が確実に自分の身の回りに押し寄せ、思い描いていたような夏休みの計画を実行できずに成果を得られなかった人も多くいると思います。そのことに不安を覚え、特に高校3年生は大学受験までに残された時間の限界を重く感じてしまうかもしれません。

そんなとき「自分は周りより遅れている気がする。自分のやり方は間違っているのではないだろうか?」と悩むこともあるでしょう。誰もが抱える心の闇です。

 
 

先日、ファッションデザイナーの三宅一生さんが亡くなられました。氏は日本の着物や世界各国の民族衣装のように一枚布でできている服こそが服の原点であると考え、「一枚の布でどこまで表現できるか。」を追求してこられました。その頑ななまでの追求心が世界から賞賛され、今やIssey Miyakeは「国際言語」にまで発展しました。

一方、氏と同世代にはKENZOの高田賢三、コム・デ・ギャルソンの川久保玲、Y’sの山本耀司など数多くの優秀な日本人デザイナーが誕生しました。その中で川久保玲と山本耀司は当時のファッション界に激震を起こしました。それまでのファッションの常識を打ち破り、黒一色でボロのようにほつれ、ゆったりとした形状の非構築な服でパリコレに打って出たのです。みじめな貧乏ルックと揶揄されましたが、派手な色彩や形の華麗さを競いながら均質化し停滞していた当時のヨーロッパファッションに風穴をあけることになりました。いわゆる「黒の衝撃」です。

 
 

今春ISMを卒業して大学に進学した幼なじみの二人がいます。彼らは小・中・高と同じ学校に通い、ISMでもずっと机を並べて勉強してきました。ところがこの二人は性質も勉強方法も対照的でした。

 

一人は原理・原則からものごとを捉えようとする理詰めタイプで、受験のセオリー通りに一日に複数の教科を満遍なく勉強をしていました。もう一人は感覚的にものごとの全体像をつかむ感覚肌タイプで、一日に一教科だけを長時間勉強していました。

来校時にトートバッグにテキストと筆記用具だけの軽装でやって来る彼の姿を受験の最初期には周りは怪訝な様子で見ていました。成績の経緯も対照的で前者は少しずつ着実に合格ラインに近づき、後者は受験前に一気に実力を上げました。

そんな彼らもこの時期、皆さんと同じように大学受験のプレッシャーを感じ勉強方法に悩みました。私のところに数学の質問にやってきては、「自分の勉強は間違っていませんよね?」と何度も何度もくり返し聞いてくるのです。そして、最終的に彼らはどちらも自身の第一志望の国立大学に合格してここを旅立ちました。

 

旅立つ直前に、お互いはお互いを見てどのように感じていたのかと二人に話を聞いたことがあります。そのとき彼らはこう言いました。

「僕は彼のような挑戦的な方法をとることはできなかったけれど、2時間半かけて5題の問題を解答する2次試験の数学でのペース配分には、彼の考え方がとても参考になりました。」

「僕は彼のようにあらゆることに集中力を維持することはできませんでしたが、その方法論は共通テストのような短時間で複数教科を解答する試験には大いに参考にさせてもらいました。」

川久保玲や山本耀司は三宅一生がいたからこそ大胆な挑戦ができ、川久保玲や山本耀司がいたからこそ三宅一生は自身の信念を貫き通せたのです。それと同じで、幼なじみの二人も自らの姿を相手に投影するように互いに影響し合いながらそれぞれのやり方で大学受験の荒波を乗り越えていきました。

だから皆さん、心配しないでください。

あなた方は何も間違っていません。

あなた方が周りに影響されていると思う分だけ、あなた方は周りに影響を与えている存在なのです。そして彼らがそうであったように、ベストでなくてベターでも良い、自分の頭で考え自分自身で選択をしてください。

ただ、もし新しい自分を創るために何かを見直したいのなら、私は全力でその手助けをしましょう。

 

川久保玲の影響を受けて登場した、「キング・オブ・デストロイ」ことマルタン・マルジェラの言葉を皆さんに贈ります。

 

『私はただ壊すのではない。必ずその先には創るということを見据えている。
そしてそれは間違いなく永遠へとつながっている。』

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