講師ブログ
2022年11月9日
『失敗の本質』から学ぶ
こんにちは、高校部英語/小中部文系担当の外村です。
私は社会を教えていることもあり、普段からよく歴史書を読んでいます。
今回はそんな中で出会った「なぜ日本は太平洋戦争で負けてしまったのか」ということを分析した『失敗の本質』という本から、当時の日本軍が抱えていたとされる、いくつかの問題点を紹介してみたいと思います。
その「問題点」とやらが、妙に現代の自分たちにも当てはまっていて興味深いです…
①目的が不明瞭で行き当たりばったり「その一手、本当に必要!?」
太平洋に浮かぶ「25」の島のうち「17」もの島を占拠しておいて、たった「8」の島しか占拠していなかったアメリカに負けた日本。日本軍は場当たり的で小さな勝利に喜びがち、結論からベストな戦略を演繹的に導き出す米軍には力は及びませんでした。
新たな一手を打つのであれば、その次の一手はもちろん、目的を念頭に置いて動くことが絶対です。目的地が決まっていないのに海原に出てどうするのでしょうか。目的地を知らされていない乗組員たちも不安で仕方がないはずです。その一手は「目標」であって「目的」ではないはず。
②異端と偶然の排除「自分と違う意見を持つ人と出会えたらラッキー!?」
「全員を同じ方向へ向かせ、異端者を罰する」当時の日本の体制です。しかし、異端や偶然とは、新しい視点を与えてくれるもの。自分たちの向いている方向が正しいのか、それを考えるきっかけにもなるものです。
欧米ではディベートの際「悪魔の代弁者」という「多数派にあえて批判は反論をする人」を取り入れることがあります。有名なのは、キューバ危機のときにキューバの核ミサイル基地を攻撃するかどうかという作戦会議の場で、大統領が大統領顧問に「悪魔の代弁者」をさせたという話。あの場に「悪魔の代弁者」がいなければ、今日の安息は無かったかもしれないと言われているほどです。
「出る杭は打たれる」そんな言葉がある日本ですが、飛び出した杭にも何か理由があるはず。頭ごなしに飛び出した杭を否定するのではなく、そこから何かを学び取り入れられるようになる必要があります。それができなければ、気付いたころには、自分が錆びつき劣化した杭になってしまい、交換されてしまう運命が待っていることでしょう。
③環境適応能力「状況は常に変化する」
昨日は太陽が東から昇ったから、今日も太陽が東から昇る…本当に?海戦はもはや艦だけの戦いではないと気付いたアメリカは戦闘機開発に力を入れていきました。しかし、日本は過去の勝利から「艦隊決戦主義」を盲信し、相手の戦闘機戦略に対応することができずに負け始めます。
現代社会もとんでもない速さで世界は変わっています。そうした周りの環境の変化にも柔軟にそして素早く適応できなければなりません。
④過去の成功を過大評価+過信「私たちは凄いんだ!…本当に!?」
以前のブログでも書きましたが、自己成長のためには、今の安心安全な状態を抜け出す必要があります。そのために必要なのが「自己内省/自己否定」
先ほどの異端の助けが無ければ気付けないこともあるかもしれませんが、何時も気づいた時には、自分を客観視しようとしてみることを忘れないようにしたいです。
⑤空気を読む文化「空気を読むだけでなく、意見もしよう」
沖縄戦に戦艦大和が出撃することは当初反対意見が多数だったにも関わらず、参謀の決定により出撃が決定されました。当時の権威主義的で、部下の意見を聞き入れるつもりのない上層部からの命令には、盲信的に従うしかありませんでした。
その場の「空気」に支配され、意見できなくなってしまうのは現代社会でも多く見られます。空気を読む文化は日本特有のものとして礼賛されがちですが、それと同じくらい意見を大切にする文化を育てていきたいところです。
どうでしょうか。
これでも部分的にまとめただけなので、全編をまとめられたわけではありませんが、戦争の話なのに、現代社会にも活かせそうな内容ばかりが書かれているのではないでしょうか…
実は本作の内容は「組織戦略論」。太平洋戦争で敗北した日本軍という組織を分析したものなのですが、現代の日本に存在する「組織」が未だに当時の「敗北(失敗)した組織」の様式から脱却できていない、ということがよく分かる本として度々話題になる本だったりもします。
という感じで、最近は「戦略書」にハマっていて…
今はどういうわけか、アメリカの海軍兵学校の教科書なんかを読みだしています…