進学塾ism

お知らせ/コラム

講師ブログ

 こんにちは、高校数学担当の森蔭です。
 いつの間にか2学期が始業してしまいましたが、緊急事態宣言の延長に伴い今月末まで各学校はリモート授業や自宅学習が継続されることになりました。対岸の火事のごとく高を括っていた「コロナ禍」もいよいよ自分の足元にまで近寄って来ていることを実感させられているのではないでしょうか。
 最近、ISMに来ている高校生と話をしていて気づくことがあります。やはり多くの人が今の状況に不自由や生きづらさを感じているのですが、稀にこの状況を楽しんでいる人がいるのです。「この期に及んで何たることか。」と思われるかもしれませんが、その人たちは決して現状を楽観視しているわけではないのです。ただ少しだけ他の人と思考の基本ソフトが違うように私の目にはうつります。
 17世紀のオランダの哲学者にスピノザという人がいます。17世紀という時代は歴史上の大転換期で、政治学、哲学、科学といったあらゆる分野が近代化された(新しくつくり変えられた)時代です。人々は同じ方向を向き、そのエネルギーによって現代にも通じる新しい仕組みがつくり上げられました。そんな中、スピノザは多くの人々とは別の方向を向きながら思索を続けました。そのため当時は、彼の思想は危険視され、異端として排斥されました。しかし、そこにこそ今の私たちが学ぶべき違う生き方のヒントがあるのではないか、としてドゥルーズやアガンベンといった現代の哲学者から注目されています。
 たとえば、「自由」とは「制約のないこと」と私たちは考えてしまいます。しかしスピノザは「自由」をそのようには考えません。そもそも制約のない状態などありえず、自分に与えられた条件のもとで、その条件にしたがって自分の力をうまく発揮できることを「自由」と考えます。人間には翼がなく、鳥のように空を飛ぶことはできません。しかしその条件のもとで人間のもつ考える力をうまく発揮して飛行機という空を飛ぶための道具を作り出しました。この考える力を発揮できる状況こそ「自由」であるというのです。さらに、スピノザは「誰も自分の力がいかなるものかを分かっていない。」とも言います。そして、「その力を知るために人間は実験(挑戦)を続けなければならない。」と言い、その実験を続けることで人間は「自由」に近づいていくと考えるのです。
 私たちは知らないうちに近代から押し付けられた観念で物事をとらえ過ぎてしまっているのかもしれません。現状は制約が多くなり不便を感じることもあります。それでも、こんな状況では何もできないと嘆くのではなく、こんな時代に生まれてしまったことを呪うのではなく、こんな今だからこそ、自分自身の持てる力を本当に知るための実験をしましょう。どんなに小さなことでも、周りからどんなにくだらないと思われようとも、今までの自分が気づけなかった力を発見できたとき、私たちは「自由」に近づいているのです。先ほどの高校生はその実験を楽しんでいるように私には見えました。
 最後に私の座右の銘であるスピノザの言葉を皆さんに贈りたいと思います。
 『嘲笑せず、嘆かず、呪わず、ただ理解する。』

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