進学塾ism

お知らせ/コラム

講師ブログ

新年明けましておめでとうございます。
いよいよスタートの月を迎え、特に受験を控える子供たち、また親御さんたちにとっては引き締まる思いで初日を迎えたことと思います。
私は今年は一番末の娘と年越し参りに伊勢神宮に行ってきました。
お札を売っているところでは、イズムの受験生の子たち全員に一人一人配りたい!という葛藤とともに・・・、家族用のとは別に全員分への気持ちを込めたお守りを一つ買いました。
どの子もみんな、幸せな結果を迎えられますように・・・と。
参拝を終え、一旦寝床に入り寝たのですが、朝起きたら末の娘の姿が見えません。外に出ると、友達からの年賀状を待ちに待ってポストに張り付いていました。
これはお兄ちゃんの、これはお母さんの、と機嫌よく仕分けしている娘の姿を見て、普段よく会っている友達でも、新年に来る年賀状で見る友達の顔はまた違うのだな、と自分の小学生時代も思いだしほっこりしているところ、私宛の年賀状の束の中に、年賀状らしくない葉書が一通混じっていました。
裏面には「完済書」の文字とと日の丸の旗の楽しいイラスト。
差出人を見てハッとしました。かつての大阪の教え子からでした。
これに触れて私の経歴について少しお話しますが、私は三重県の某進学塾で数年勤めた後、大阪で15年ほど夫の母と個人塾をしていました。
その時の生徒の話です。
私の住んでいた大阪の地域は全国でも学力テストワースト1にもあがる地域で、実に様々な家庭事情を抱えた子供たちの多い地域でした。自分の子供も当然その地域の地元の小学校、中学校にも通わせていましたので授業参観も行きましたが、二階から給食の牛乳びんを落としたり、授業中に毛布を頭からかぶって寝ている子なんてざらにいるのが普通でした。
小学校でも、週に2,3回遅刻してくる子供が娘のクラスにいました。母子家庭でお母さんが夜勤で、その子が弟を保育所に送って行かなくてはいけないからです。先生は「○○の家は事情があるから遅れてくるときがあるねん。あんまり聞いたんなや。」とクラスの子たちに言っていましたが、子供たちも事情を知っていたので突っ込んだりからかったりなどはありませんでした。
三重県の伊勢出身ののんびりどっぷりで育ってきた私はこの衝撃的な事情が最初はなかなか受け入れられず、
この地域での意識の切り替えに狼狽していました。でも自分の子供も生きているコミュニティーだから、受け入れ、順応していかなければ、と。
ここで話は戻りますが、「完済書」を送ってきてくれた男の子は、そういう複雑な家庭の子でした。母親が再婚し、その母親が亡くなり、再婚相手の父親が塾に行く費用を出さなくなった、といったドラマのような展開でした。ただ、その子は通い続けました。しかし3か月滞納し、その子の家を訪れたところ、義父がめちゃくちゃ怒りその子に「なんでやめてへんねん!」と暴れだしました。
ただその子は通い続けました。3か月たっても必ず授業の日に来る。まるで居場所のように。私たち指導する側として子供に学費のことをいうのは一番つらくていやなことです。でも現実として言わなければいけない。とてもつらいですがその子に言いました。社会はお金のやり取りで成り立っているからもう来たらあかん、と。その子は学力が高く、伊勢でなら伊勢高は楽々いける子です。その子はその後も通い続けました。教室に行くとその子が座っている。
私個人の気持ちでは同じ子を持つ立場としてボランティアで見てあげたい、でもこんな状況になってもお金は発生する社会に生きてる、近所のおばちゃんがすべて助けてくれるわけじゃない、と、悩み悩んだ末、出世払いにしようとその子に相談しました。
何年かかってもいいから稼げるようになったら毎月1000円ずつでも返しに来てくれたらええから、と。(個人塾だからこそできた暴挙な対応ですが)、だからなんもお金のこと気にせず塾に来たらええねんで、というたときのその子の、荷がおりたような、ほー、としたような顔が忘れられません。当然払いに来てくれることなんか期待せずボランティアになろうとええやろ、と思っていましたので、私が大阪を離れていた今、大阪の実家に毎月払いに来てくれていたらしく、もういいよ、といっても絶対に払うと言ってきかなかったそうです。
それが完済し、嬉しかったのでしょう。今年の年賀状として届いたという結果です。今その時の子は25歳です。子供にお金の負担を感じさせるのは一番つらいこと、であっても現実社会と向き合わせることも大切です。
今通っている習い事、塾、に関してもお金がかかっていることは知っていてもそのことに対して当たり前のように子供がなんの重さも感じない麻痺しがちな世の傾向です。豊かで穏やかな環境に慣れ、いざ大学進学先や就職企業先で都会に直面した時、そのようなハングリーな同世代の子たちに相対していけるように自立の力が必要ではないか、とつくづく感じました。
先日、大阪で私の住んでいた地域の教育委員会におられる方の講演会に行きました。
おもしろい切り口をされました。その切り口はこうです。
「みなさんの子供さんのクラスで、給食の時間に、給食の載ったお盆をひっくり返したとき子供さんはどう反応しますか?」と。
行動パターンは3つあり
①ひっくり返した相手をちゃかす
②ひっくり返した相手を助けに行く
③だれかが口火を切るまで固まりつづける
最近の傾向として③が多いそうです。
データとして欧米では③の傾向は徐々に年齢が上がるにつれ減少されていくそうですが、日本では年齢とともに③タイプが多くなっていくようです。周りの空気を見てから行動する、といった傾向があると。
傍観者タイプは事なかれ主義ともいえます。自分のことでさえ受け身的にしか考えられない子供たちが増えていく中、他人に目を向けていく心の在り方にまで到達しないのかもしれませんが、伊勢から羽ばたいていくイズムの子供たちにエールを送ります。
今年度もどうぞよろしくお願いいたします。
小中部 山本亜弓

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