進学塾ism

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講師ブログ

 こんにちは、高校数学担当の森蔭です。
 新学期がスタートして2ヶ月が経とうとしています。高校3年生は1回目のマーク模試と記述模試が行われました。また、現在多くの高校では1学期の中間テストが行われています。高校1年生にとっては高校入学後初めての定期テストです。間もなくその結果も返ってきます。それぞれの努力の成果が気になるところです。
 昨年度末の3月のはじめ頃、当時高校1年生だったある生徒から相談を受けました。その生徒は2年生から理系に進む予定の生徒でした。しかし、一年を通して数学の成績が安定せず、特に2学期から3学期にかけては成績が低迷していたため学校の面談で文系への転向をほのめかされたということでした。その生徒は理系に進んで学びたいものがあったため学校の先生の言葉にショックを受けて私に相談に来ました。
 その生徒の話では、「自分は人一倍数学の勉強に時間をかけているのに成果が上がらない。」「勉強時間や勉強法もいろいろ工夫したけれども一向に結果が変わらない。」「周りの人は頭のいい天才肌ばかりで、とても敵う気がしない。」というものでした。
 私には今とても気になる3人の若者がいます。
 一人目がシンガーソングライターの『あいみょん』です。彼女は2015年にマイナーデビューした後、わずか4年後の2018年末にNHK紅白歌合戦に出場するという異例のスピードでスターダムにのし上がった新進気鋭のアーティストです。そんな彼女があるインタビューで次のようなコメントを残しています。「世間は私のことをとんとん拍子に階段を駆け上がったようにいうけれど、そういう評価にはすごく悲しくなります。人の苦悩とか苦労は時間で計れるものではないんですよ。密度だと思います。私はこの4年間考えられる限りありとあらゆることをしてきました。その濃厚な4年間を簡単な言葉でかたづけてほしくありません。」
 二人目がスタイリストの『高木琢也』です。彼は高校・大学・専門学校・公務員とあらゆる試験に不合格となった後、美容の世界に飛び込み、日本最大規模の美容コンテストで前人未踏の3年連続チャンピオンを勝ちとった、一日の売り上げが1200万円という今の日本で最も予約の取れない美容師です。そんな彼はあるインタビューに次のように答えています。「要はこだわりの問題なんです。僕の場合お客さんを前にすると自分ならこうしてもらったらうれしいだろうなと思うことを一個や二個じゃなく、十個以上こだわってやっていく。こうすればもっと良くなるんじゃないかとかああすればもっとハッピーになってもらえるんじゃないかとか。いつもうまくいくわけではないけど、とにかく止まってしまうことの方が怖いんです。」
 三人目がボクサーの『井上尚弥』です。彼はプロデビュー6戦目で世界王座を獲得すると8戦目で2階級制覇、16戦目で3階級を制覇しました。先日の5月18日に世界バンタム級王座統一トーナメント(WBSS)準決勝でKO勝利をかざり、階級の垣根を越えた世界最強ランキングで4位に格付けされた正真正銘の天才ボクサー、モンスターです。その井上が尊敬して止まないバンタム級のレジェンドが辰吉丈一郎です。そのカリスマ辰吉が井上のことを聞かれたインタビューで次のように答えています。「そんなもん普通の努力じゃありえない。世間はそれを天才の一言でかたづけるけど、その陰でどんだけの努力と苦労があるか。軽い。ボクサーに失礼。」
 「努力は時間ではなく密度で計るもの」「一個や二個の工夫など工夫とは言えない」「天才の陰に隠された恐ろしいほどの努力」私はこの3人の若者から「努力」の意味を教えられたような気がします。
 その後、私に相談に来た生徒はそのまま理系に進みました。自分なりに工夫をし数学との向き合い方を変えました。以前より私に対する質問も増え、その質も変わってきました。きっと「努力」しつづけているのだと思います。本人の気づかないうちに。
 この前その生徒が次のように言っていました。
 「先生、最近数学が楽しくなってきました。」

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